Story07 /エッセイ:atelier cotton house 長澤舞香さん


スカルス⼿芸学校でのくらし

デンマークという国をご存知ですか。

もちろん名前は知っているけれど、どこにあるか分からない、イメージが湧かない⽅も多いかもしれません。

 

ノルウェーやスウェーデン、フィンランドと同じ北欧諸国で、⾯積は九州ほどの⼩さな国です。

⼈⼝は東京の半分以下。酪農が盛んで、世界中の⼦どもたちに⼈気なレゴブロックや、⾷器ブランドのロイヤルコペンハーゲンなどが有名です。

 

そんな北欧デンマークの⽥舎町スカルス -Skals-にある「スカルス⼿芸学校」に、私は 2022年1月から6⽉まで約半年間滞在しました。

▲150 年以上の歴史を持つ⼿芸学校です
▲150 年以上の歴史を持つ⼿芸学校です

スカルス⼿芸学校とは?

デンマークにはフォルケホイスコーレという国⺠学校制度があります。

試験や成績評価がなく、寮⽣活のなかでの対話を通して学び成⻑することを⽬的とした学校です。

 

スカルス⼿芸学校も、このフォルケホイスコーレの⼀校に位置付けられています。

⾼校を卒業したばかりの18歳から、⼦育てを終え⾃分の時間を楽しみたい60代まで、さまざまな年代の⽣徒たちが⼀つ屋根の下で暮らしています。

 

メインの教科は刺繍・裁縫・編み物、⼿織り。その他にも草⽊染めや陶芸、シルバーアクセサリー、⽔彩画などを選択授業で学ぶことができます。


⼿織りならスウェーデン、刺繍ならフランスなど、もっと⼿⼯芸に特化した国があるのに、なぜデンマーク?とよく聞かれますが、さまざまな種類の⼿芸を幅広く学べることがスカルス⼿芸学校の魅⼒です。

 

⼿織りの授業で織った布を裁縫の授業でワンピースに仕⽴てるなど、教科をまたいでオリジナルの作品を作ることができました。

北欧で⼿芸を学びたいと思い、この学校を⾒つけたのはもう4年以上前のことになります。

 

⻑年働いたアパレル業界での仕事を辞めて留学することを決意したものの、コロナの影響を受け 2 年ほど延期をしてからの留学となりました。

 

さらに 2022年1⽉はコロナの再流⾏によりデンマークの学校は軒並みロックダウン。スカルス⼿芸学校も、予定通り開校するかどうか分かったのは出国の3⽇前でした。


「好き」を見つめ直せた5ヶ月

そんな不安な中でスタートした留学⽣活でしたが、この 5ヶ⽉間は、朝から晩までものづくりに浸れる環境で⾃分の好きなものを⾒つめ直す時間になりました。

 

学校では午前 9 時から 15 時ごろまで約 1 週間単位で⼀つの科⽬を集中して学びます。

授業後は夜 11 時まで教室を⾃由に使えるので、思いきり制作に没頭することができました。

評価や締め切りがないからこそ、⾃分が作りたいものに向き合うことができ、納得がいくまで作り直したり、思い切ってチャレンジすることができたのだと思います。

個性豊かな先⽣たちも、⽣徒が作りたいものを形にするための⼿助けをしてくれました。

 

また、学校に来ている⽣徒はものづくりが⼤好きな⼈たちばかり。

暇さえあればお茶の時間も夜の⾃由時間も編み物をしたり刺繍をしたり... 常に制作途中の作品を⼩脇に抱えて⽣活をしていました。

⽂字通り、暮らしの中にいつも⼿仕事がある⽣活がスカルスにはありました。

▲休憩時間に⽣徒たちが集うライブラリー
▲休憩時間に⽣徒たちが集うライブラリー

⼿仕事のある暮らしは、忙しい⽇常の中で、ほっと安らげる癒しの時間になったり、⼩さな達成感を得られたり、次は何をつくろうかな … とわくわくしたり、⼈⽣を豊かにしてくれるものだと思います。

 

帰国後は、⼿仕事のある幸せな時間を少しでも多くの⼈に広めていきたいと思い活動をしています。

▲11 ⽉に開催した作品展には多くの⽅が⾜を運んでくださいました
▲11 ⽉に開催した作品展には多くの⽅が⾜を運んでくださいました

これから全 6 回、デンマークで出会った⼿仕事の話を中⼼にエッセイを書かせていただきます。

ものづくりのきっかけになったり、制作途中の息抜きに楽しんでいただければ幸いです。




【筆者プロフィール】長澤舞香(ナガサワ マイカ)

 

美術系の学科を卒業後、アパレル企業に勤務。

2017年に手織工房じょうたにて「さをり織り」と出会い手織り作品の制作をはじめる。

2022年からデンマークのスカルス手芸学校に半年間留学し、手織り、編み物、刺繍など手芸全般を学ぶ。

現在は手芸店で働きながら、atelier cotton houseとして作品制作をしている。

 

Instagram/ @ateliercottonhouse

note/ https://note.com/ateliercotton

Photo & Text :Maika NAGASAWA