Story01 /エッセイ:羊毛作家 緒方伶香さん

【 紡ぐ、かためる、染める、編む、織る・・・。無限に広がる、つくる楽しみ。】



▲中央上から時計回りに

『きほんの糸紡ぎ』『えんぎもんフェルト』『羊毛フェルトの教科書』(誠文堂新光社)

『手のひらの動物・羊毛でつくる絶滅危惧種』『羊毛のしごと+』(主婦の友社)

2008年無印良品広告


2006年に上梓した初の著書「羊毛のしごと」(主婦の友社)は、私が出会った手しごとの面白さを伝えたくて、羊毛でできることすべてをぎゅっと詰め込んだ一冊でした。

 

家庭科の授業では決められた作品をお手本通りに作るのが苦手で、美大の染織科では地味な反復作業に退屈し、映画館や古本屋巡りに明け暮れていた私が、まさか手しごとの本を出すだなんて、誰も想像もしなかったろうと思います。

 

WOOLといえば毛糸のセーターくらいしか思い浮かばなかった30代の頃、絵本店で偶然見つけたふわふわの羊毛に心うばわれたのが、この仕事を始めるきっかけになりました。

そして、「原毛の状態からはじめれば、自由自在に形作ることができる」という素材の可能性を知り、手しごとは、私の生活の一部になりました。

 


▲羊毛の手しごとを紹介した過去の掲載雑誌の一部

『おしゃれ工房』(NHK出版)、『STORY』手は女を語る(光文社)、『ほぼ日』つむぐ人、『おしゃれ時間』(主婦と生活社)、『Ku:nel』(マガジンハウス)、『母の友』(福音館書店)、『セサミ』(角川ssコミュニケーションズ)、『キンダーブック しぜん』(フレーベル館)

欲しいものがなければ自分の手で作ればいい。

難しいことは抜きにして、その気になれば何でも作ることができる。

お裾分けのビワや柿の葉、山から届いたヤシャブシなど、美しい色を蓄えた植物、牧場で刈り取られた良質な羊毛、そして編み針や織り機、鍋などの道具たち。

集めた素材にひと手間加えれば、思い通りのものができ上がり、毎日の生活に張りと豊かさが生まれます。

だけど何よりとにかく楽しくて、作る手を止められなかったというのが本当のところです。

最近は、長年開催してきた羊毛のワークショップを続けつつ、「Nomad Knitter編み部」という場所を選ばない編み会、多綜絖の組織織り、和裁も楽しんでいます。

欲しいものが簡単に手に入る今だからこそ、時間をかけて自分の手で作るものは特別です。例えば手編みのニットなら、はじめて身につけて友達に会う日は足取りも軽く、誇らしい気持ちになります。

 

昨年からの予期せぬ緊急事態を経て、ほとんどの人が、日々の生活を見つめ直したのではないでしょうか。人生を心地良く過ごすためにはどうすればいいのか。

私の場合は、20年スタッフとして通った羊毛屋が店を閉じたこともあり、手しごとを通して生まれる人の輪や作る喜びの大切さに改めて気づかされました。

そして今、そんな手しごとの愉しみをつなぐお手伝いができればという思いでこの連載を書いています。しばらくの間、お付き合いいただければ幸いです。

 

 



【プロフィール】

緒方伶香(オガタ レイコ)

 

美大卒業後、テキスタイルデザイナーを経て、東京・吉祥寺にある「アナンダ」のスタッフとして羊毛に親しむ。現在はワークショップを開催したり、羊毛のある暮らしや作品を雑誌やテレビで紹介している。

 

羊毛に関する著書多数。『きほんの糸紡ぎ』『えんぎもんフェルト』『羊毛フェルトの教科書』(誠文堂新光社)

『手のひらの動物・羊毛でつくる絶滅危惧種』『羊毛のしごと+』(主婦の友社)

Instagram @reko_1969

◉ワークショップ

@walnut_tokyo  さんで毎月開催中

◉ノマドニッター編み部

@tegamisha 主催毎月開催中

 

 

 


Photo & Text :Reiko OGATA

Profile Photo  : Chie ENDO