Interview03/ illustration & embroidery にのみやなつこさん 前編

イラストレーターであり、刺繍作家でもある にのみやなつこさん。

イラストのお仕事が多忙な中でも刺繍制作や作品の販売などを継続的に行われている様子を常々拝見しておりました。

 

インタビュー前編は、イラストのお仕事について、また、日々の生活の中でお仕事と刺繍制作を両立する工夫についてお話しいただきました。



【にのみやなつこさんプロフィール】

 

武蔵野美術短期大学生活デザイン学科卒。

インテリア・商品企画会社等経て、1998 年よりフリーランスイラストレータとして活動開始。主にコラムに添えるカット、イラストレシピ、似顔絵、4コマ漫画、ロゴマークデザインなど。

わかりやすく、ほのぼのとしたユーモアを感じさせる女性向けのイラストが得意。

一方で2012 年より刺繍を施したアクセサリーやアート作品の制作・展示・販売、ワークショップやおしゃベりしながら手芸を楽しむカフェの企画・運営にも力を入れる。

 

【HP】https://nino-natsuko.wixsite.com/2016

【Instagram】

◉イラストや日々の生活 @ninomiya_natsuko

◉剌繍  @ninomiya_natsuko817 




にのみやさんはお仕事の幅が広く、開催されるイラストの企画展も非常にユニークです。

 

イラストレーターと刺繍作家を兼業されていらっしゃるところも『染め織り暮らし』にアクセスしてくださる方にはご興味持たれる方が多いかと思います。

まずはイラストのお仕事についてお聞かせください。

– にのみや さん 

武蔵野美術短期大学でプロダクトデザインコースを専攻しました。生活に根づいたデザインを考える、ということを学んだと思いますが学生の頃についてはあまり覚えていないのです。

2年生になる時、編集コースかプロダクトデザインコースを選べたのですが、なぜかプロダクトデザインコースを選びました。

 

卒業後はデザイン畑にいられたら良いなと思い、20代はいろいろな仕事をしました。インテリアのデザインをしたり、商品企画の事務所に勤めたり。

 

でも何かクリエイティブなことができるところに身を置いておきたいと思っていました。

20代は模索と迷走の時期でしたね。

 

落ち着いて自分のやりたい仕事が出来るようになったのは結婚してからなのです。32歳で結婚、33歳で娘を生みました。

出産後は、子供が小さい時は学校から帰ってきた時に「お帰りなさい」を言ってあげたかったので、家でできる仕事がしたいなと思っていました。

 

ちょうど一般家庭にネット環境とパソコンが普及し始めてデータ納品が可能になった頃。そんな時、知り合い方から「イラストを描けたよね」、とお声がけ頂きました。

 

とあるNPO法人のファックス通信にイラストを描かせてもらったのがイラストで報酬を得るようになった最初のお仕事でした。

 

その後、ライターさんに誘われてニュースレターを描くお仕事も頂いたりして、少しずつ家でできるお仕事が増えてきました。

その「たまたま」が奇跡的に続いて今日まで至っているという感じです。

 

 

きちんとご自身のプロフィールとお仕事を

ポートフォリオ(1)にまとめてらっしゃいますね。

こういう事をきちんとされておられるのが素晴らしいと思います。

 

※1 ポートフォリオ:仕事の実績や経験をまとめた作品集


▲にのみやさんのポートフォリオ。(写真提供:にのみやなつこさん)
▲にのみやさんのポートフォリオ。(写真提供:にのみやなつこさん)

― にのみや さん

仕事って、たくさんやっても一年が終わる頃にはどんな仕事をやったのか忘れてしまいがちなのでその都度記録しておくと良いと思いますよ。

私は小さな仕事でもポートフォリオにまとめておきます。ポートフォリオもイラストのお仕事と刺繍の作品に分けているんです。

 

ポートフォリオを人にお見せする機会がある時は、相手の方に合わせてイラストのお仕事と刺繍の作品のどちらをお見せするのが良いかを使い分けています。

 

仕事でも作品作りでも、どんなことをやってきていて何が得意なのか相手に一目でわかっていただけますよね。

 

イラストはクライアントワークだけでなく、個性的な個展も開催されています。

前回の『噂の二人/porte rose et porte rouge』展がとても

興味深かったのでそのお話を伺えますか。


▲『噂の二人/porte rose et porte rouge』同時開催 二人の往復書簡展での展示作品(2021年)
▲『噂の二人/porte rose et porte rouge』同時開催 二人の往復書簡展での展示作品(2021年)

― にのみや さん

赤坂にあるギャラリー“カフェジャローナ”オーナーから「二人でやったらおもしろいんじゃない?」とお声がけいただき、友人のイラストレーター小川麻子(★)さんとの二人展を2021年秋に開催しました。

 

とある街角に仲良く並んだ小川さんのブティックと私の美容室・・・そんなコンセプトでオリジナルのイラストやアクセサリー、バッグなどを展示しました。

とても楽しかったので、またいつか第二弾をやりたいねと話しています。

 

イラストレーターとしてご活躍されながら、

どのようにして刺繍作家としての

作品を発表されるようになったのでしょう。

 

2012年頃、Facebookが流行り始めて、昔の友達と繋がるようになりました。

そのような流れで手芸好きの大時代学の友達と久々に再会し、手藝部を立ち上げました。

自分で刺繍したものを人に見せたり、イベントに参加して作品を販売したりするようなったのもこの頃からです。

 

イラストのお仕事の締め切りもあり

お忙しいですよね。

どうやってイラストと刺繍の作品作りを

両立されているのですか。

 

それはもうホントに大変です。

年齢的に、体をいたわりながら仕事も制作もしないといけないのですが、以前はつい集中しすぎて無理をしてしまったりすることがありました。仕事中もやらなければいけない家事を思い出して気もそぞろになったりして。


▲刺繍制作の様子。使い勝手が良い刺繍台はご主人の手作り
▲刺繍制作の様子。使い勝手が良い刺繍台はご主人の手作り

― にのみや さん

今は、タイマーを使って集中する方法を使っています。タイマーを30分かけて、その時間は集中して作業をする。

30分したら少しストレッチしたり、お茶を飲んだりしてリフレッシュする、それを繰り返して作業を進めます。

 

時には45分、60分にセットすることもありますが、続け過ぎると体が固まってしまうので、一度ほぐしてあげることが大切だと思います。私にはこの方法が一番効率良くはかどるなと思っています。

 

イラストの仕事を集中してやっていると、なかなか刺繍の制作ができないんです。でも、展示会など刺繍制作にも締め切りがあります。

一日30分だけでも進めておくと気持ちが楽なんですよね。ほんの少しだけでも次の日の作業の足掛かりを作っておくことが私にとっては大切です。

 


私も自宅でいくつかの仕事を並行して行うことが

あるのでとても参考になります。にのみやさんの

タイムマネジメント方法を試してみたいと思います。


▶︎にのみやなつこさんのインタビューは後編へ続きます

 

◉イラストレーター小川麻子さん @asakoillustration


[取材・撮影 (にのみや さん提供以外)] : 遠藤ちえ / 遠藤写真事務所 @chie3endo

[撮影会場]STUDIO OLIYA