注染作家の内藤早苗さんは、東京都葛飾区にある東京和晒株式会社の注染工房を作品作りの拠点としています。
今回の手仕事場訪問は内藤さんの展示会に向けての制作する過程に立ち合わせていただきました
注染の制作過程は、「板場(いたば)」で糊置き作業をする→「紺屋(こんや)」で防染糊を絞り出し「土手(どて)」と呼ばれる囲いをつくり染料を注ぎ込む→水洗い→乾燥させるという流れで行います。
内藤さんと東京和晒株式会社との関わりは、内藤さんが女子美術大学デザイン・工芸学科の大学院に在学していた頃にさかのぼります。
当時、注染の職人の高齢化が進み、このままでは国内に注染職人がいなくなるということが危惧されていました。そこで東京和晒株式会社は東京都との協働で若手育成の機会を設けました。
当時、女子美術大学の大学院に在籍していた内藤さんは、指導教員の勧めによってその育成事業に参加することになり、育成事業終了後も内藤さんは注染で作品作りを続けています。
東京和晒株式会社との長い関わりでこちらの工房を制作の場として使わせてもらい、注染作家としての制作活動を行っています。
内藤さんは現在、母校の女子美術大学で注染の授業を担当しています。
手仕事場に伺った際も、卒業生の方が制作の助手をしていました。
この後、内藤さんはこれらの工程を制作する作品の数だけ繰り返して作業を行っていました。
東京がまだ暑い夏の終わりに取材に伺いましたが、この日の作業は数時間にも及び、制作には集中力と体力も必要だと実感しました。
内藤さんは、制作する作品の仕上がりに気を遣いながら一つの工程ごとに一定のリズムを保ちながら集中して作業している様子が伺えました。
オリジナルのデザインで作品を制作する作家でありながら、伝統的な注染の技術を守り制作をする職人のような一面も垣間見えます。
内藤さんは学生の頃に注染と出会い、その後作家として数多くの展示・販売を続けてきました。
オリジナルデザインの手ぬぐいは職人さんの仕事への敬意として、あえて全国の注染職人の方に発注しているそうです。
内藤さんは注染の技術がこれからも存続し、その価値や魅力をより多くの方に知ってもらえるように国内外に広く伝える活動を続けていきたいと話してくださいました。