埼玉県さいたま市にお住まいの渡邉寛之さんの自宅アトリエへ伺いました。
光が差し込む明るいリビングに機織り機や紡毛機、手仕事の道具が置いてあります。
機織り機は大忠式手織機、紡毛機はASHFORD製。そのほか、糸や織道具などがきれいに並んでいます。
渡邉さんは東京都八王子市で染色工場を営んでいた父・七三男さん、母・静子さんのもとに生まれました。一家はその後福島県会津若松市へ工場ごと移転、両親が営む染色工場兼自宅では、主に糸染や靴下染めをしていました。
七三男さんは20年以上前に亡くなり今では工場も閉めてしまいましたが、渡邉さんは両親や兄夫婦、従業員の人たちがにぎやかに働いているところを間近に見ながら育ちました。その風景は今でも懐かしく思い出すそうです。
渡邉さんは福祉系の大学を卒業後20年以上福祉の仕事に携わりましたが、体調を崩して退職。
しばらくの間、自宅で療養する暮らしになりました。少し体調が良くなってきた時、せっかくだからこの機会にやりたいことをやってみようという気持ちが芽生えます。
渡邉さんには七三男さんが16歳から修行し、生業としてきた「染め」が身近な存在ではなくなってしまったことが残念だな、という思いがありました。
染めについて調べてみたところ、草木染めの作家さんがいることを知り植物でも様々な色に染めができると知り、興味を持ちます。
(写真提供:渡邉寛之さん)
そこで、埼玉県の越谷市にある「羊毛と古道具の店ソウイ」でスピンドルや糸染めの体験講座を受講。
スライバーを染め、紡ぐ講座に参加しました。そこで、羊毛を素材とした手仕事の楽しさ、幅の広さや自由さを知ることができました。
その後、「きほんの糸紡ぎ/ 誠文堂新光社」「羊毛のしごと/主婦の友社」(緒方伶香著)などを参考に、植物染めしたウールをひたすらスピンドルで紡ぐ日々を重ねました。
また、妻・奏子さんが友人でもある染織家の山口ミスズさんから10年以上前に贈られた、細い均一な糸で織られた作品をまじかに見て精緻な素晴らしさに感銘を受けました。
山口さんの作品は、ひとつの目標になりました。
スピンドルで紡いだ糸がたくさんできてきたので形にしてみたい、と2020年夏頃再び、羊毛と古道具の店ソウイでリジット織機を体験し、布を織り始めます。
2021年に縁があってAshfordの紡毛機にも出会い、1年以上続けていたスピンドルとのあまりのスピードの違いに衝撃を受けました。ますます紡ぎも楽しくなりました。
その後、8枚綜絖のAshford社製Table loomが仲間入り。独学で書籍「手織の教科書/ グラフィック社 」などから組織織りも学び、ひたすらトライ&エラーを繰り返す毎日でした。
この頃から、他の方が織った作品を実際に見てみたいと思い、色々な展示会に行き素敵な作品を作る作家さんたちに出会いました。
2023年に大型の織機・大忠式手織機を導入。最初は大きいかなと思ったそうですが、使い心地が良くとても楽に織れるようになったとのことです。
(写真提供:渡邉寛之さん)
渡邉さんは草木染め、スピンドルでの糸紡ぎから始まり、どんどん染織の魅力に惹き込まれています。
最近では近しい人に作品を見てもらい、販売したり、オーダーを受けたりもしています。
今後は展示会などを開催して、色々な人に作品を手に取ってもらいたいと話してくださいました。
渡邉寛之さん
Instagram ID :@hiro.watanabe_61
【渡邉寛之さんの手仕事講座】
2024年10/19(土)
染め・織り道具SHIRO.の運営する「染め織り暮らし工房」で渡邉寛之さんを講師にお迎えして
リジット機でポットマットを織る講座が開催されます。
詳細は近日お知らせいたします。