Interview02/ Found & Made 店主 佐野麻子さん 前編


【佐野麻子さん プロフィール】

 

武蔵野美術大学でテキスタイルを学ぶ。

卒業後、企業でテキスタイルデザイナーとして6年間勤務し、シルクスクリーンプリントの作家活動も行う。在職中にスウェーデン織りをベースとした先生のもとで手織りを学ぶ。

2014年、スウェーデンの手工芸学校のサマースクールに参加。

翌年、「Found&Made」オンラインストアを始める。

2016年夫と株式会社TRUNK WORKSを立ち上げ、東京・国立にて会社と店舗件アトリエを構える。

2019年、駒沢女子大学にて手織りの非常勤講師を務める。

 



佐野さんのお店、Found & Madeといえば道具、糸、ヴィンテージ雑貨の販売、手織りのクラスまで開催する手仕事に携わる方から注目されているお店です。

佐野さんはどのようにして織りと出会ったのですか?

- 佐野さん

武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科でテキスタイルを専攻しました。

 

テキスタイルを学べる大学はいくつかあってそれぞれ特色があるのですが、私が進学した武蔵野美術大学はアート志向が強い先生方で、商業的なものを作るというよりも、テーマがあって、それに対して自分がどう表現するかを求められました。

 

様々なカリキュラムの中で織の授業もあり、そこで織の基礎も学びました。手織は自分の肌に合っているように思いましたし、織ることが好きでしたね。


学生の頃はどのような制作をしていたのですか?

- 佐野さん

課題で使う素材の選択は全て自由でした。例えば、針金を使って織ったりしても良かったのです。

コンセプトに対してどう自分が表現するか、とか新しいテクニックを探求することを求められるという感じでした。

 

私は、自分が織った生地にプリントするという表現を選びました。

織の技術は基本的なことしか学ばなかったので、私は平織でどういう生地を作るか、テクスチャーの方を重視して表現する方法で制作をしました。

 

とにかく、アートな表現にこだわりなさいという方針でしたので、試行錯誤しながら、様々な素材で自由に表現することに挑戦しました。


大学のテキスタイル課を卒業された後は、どのような

お仕事に就かれたのですか。

― 佐野さん

卒業後はテキスタイルデザイナーとして企業で働きました。私が勤めたのは老舗のメーカーで百貨店の一階で帽子やストールなどの小物類を制作している会社でした。

 

他にもアパレル関係の企業を受けたのですが、新入社員は販売から仕事をスタートさせることが多い業界です。私は早くデザインの実績を積みたいと思っていたので、入社した会社は希望していたデザインの仕事がすぐできる環境だったと思います。

 

入社1ヶ月目でストールのデザインの担当を任されて、好きにデザインしていいよと言われました。自分の描いたイメージデザインを元に、提携している工場と相談しながら商品を作り、それが商品になって販売されるという一連の流れを見届けられました。恵まれた環境だったなと思います。

幸い日本でストールが流行っていて良く売れる時代でした。会社の景気も良く、実績を積むことができました。


テキスタイルデザイナーの経験を積まれたのですね。

会社にはどのくらいの期間お勤めされたのですか。

― 佐野さん

私が就職した時、職場は年上の方ばかりでした。私が一番年下だったので、色々教えてもらい、可愛がってもらいました。入社後はなかなか後輩が入って来なかったり、入ってもすぐ辞めてしまったりして、一番下の時期が長かったです。

 

勤めている時からいつかは独立したいと思っていたのですが、先輩方がバタバタと辞めていかれるタイミングが重なり、後輩ができ、責任者にもなりました。

そんな時に辞めるのは無責任かなと思ったので自分の考えていた予定より少し長く、6年ほど勤務しました。

 

勤め始めて3年目くらいに、もう一度織りを再開したいと思うようになりました。

卓上の織り機は持っていたのですが、しばらく織りをやっていなかったので忘れてしまっていて。

もう一度きちんと勉強したいと思い、組織図の読み方・書き方から教えてくれる織り教室を探しました。

 


▲▲Found & Made 店内にあるアトリエスペース
▲▲Found & Made 店内にあるアトリエスペース

働きながら、織りの勉強を再開されたのですね。

どのような教室へ通われたのですか。

― 佐野さん

私が通うことにした織り教室の先生はスウェーデンの織りをベースにした先生で、そこでスウェーデンの織りと出会いました。

組織図の見方や設計の仕方がわかると、自分で組織図をデザインできるようになります。本を見て作るだけではなくて、それをアレンジしたり、一からデザインしたりもできます。そこの教室でしっかりと教えて頂きました。

 

当時の仕事で組織図を作るのは制作工場の役割でしたが、デザインする側の私が組織図を学んだことは、仕事の上でもプラスになったと思います。

 

そして会社の方も落ち着いてきたタイミングで、いよいよやりたいことを始めようと、退職することにしました。

 


テキスタイルデザインのお仕事を退職されてから、

どのようなことをされたのですか?

― 佐野さん

仕事を辞める前から、退職したらこれをやりたいと決めていたことが2つありました。スウェーデンのセーテルグランタン手工芸学校/Sätergläntan(以下、セーテルグランタン)のサマースクールに参加することと職業訓練学校で貿易の勉強をするということでした。

 

2014年、会社を辞めたのとほぼ同時にセーテルグランタンへ行きました。

セーテルグランタンはスウェーデンにある手工芸学校で、7月から8月にかけて普段通っている学生さんたちが夏休みになります。

その間に手織り、木工、鉄、刺繍などを短期集中で学ぶサマースクールが開催されます。

学校は全寮制で3食付き、滞在中は寝食を共にして缶詰状態で織りに集中しました。

 


― 佐野さん

セールグランタンはスウェーデンのダーラナ地方にあります。伝統的な手工芸が色濃く残っている地域です。授業はスウェーデン語で行われます。

 

サマースクールにはスウェーデン国内の方はもちろん、私が参加した時はイギリス、オランダ、スイスなど海外の方も参加されていました。子育てがひと段落した、私のお母さん世代の方が多かったですね。

 

滞在中、白夜で夜中の12時くらいまで外が明るかったので、9時頃から22時くらいまでずっと織っていることが多かったです。

 

織りの技術を習うだけでなく、先生が車を出してくれてあちこちの工房の見学に連れて行ってくれたり、手工芸の展示をしているところへ連れて行ってくれたりしました。


 

それから、夏の間に個人宅で行われるガレージセールLoppis(ロッピス)を楽しみました。また、リサイクルショップにも行きましたが、布を糸状にした裂布や中古の織道具もたくさん売られていました。機織りが盛んな国ならではですね。

 

 


 

スウェーデンで織りを学ぶ。とても魅力的ですね。

滞在中の暮らしの中で印象的なことはありますか。 

 

- 佐野さん

印象深いことは、車を持っているクラスの友達が「泳ぎに行こう」と湖に連れて行ってくれたことです。

近くには綺麗な湖がたくさんあるので、夏は湖で泳ぐことが日常なんです。

 

近所の子供たちも泳ぎに来ていたりして、もちろん私も泳ぎました。30分くらいサッと泳いでサッと引き上げる。豊かな暮らしですよね。

北欧は冬が長いのでみんな目一杯夏を楽しもうとしていました。

 

 


△ある日のフィーカの様子。(提供:佐野麻子さん)
△ある日のフィーカの様子。(提供:佐野麻子さん)

それから印象的なのはやっぱり10時と15時のフィーカというお茶の時間。クラスで織っている途中でも誰かが「フィーカタイムよ。」と言ってコーヒーを淹れてくれました。

 

そして、夏のフィーカは絶対外で楽しみます。お茶をしながらの話題は結構ディープに政治のことだったり、宗教観の違いについてだったりしました。文化の違いを肌で感じましたね。

 

セーテルグランタンでの滞在期間中は、生活しながらみんなで織りを楽しむといった感じでした。

 

織ることだけではなくこれから独立してやりたいことや暮らし方など、様々な刺激を受けて帰国しました。

 



▶︎佐野麻子さんへのインタビューは後編へ続きます。

後編は、スウェーデンから帰国してお店を始めてから現在までについてのお話です。

 

Found & Made -CRAFT SHOP-WAVING STUDIO-

186-0005 東京都国立市北2-35-57

TEL/FAX 042 505 9517

https://www.foundandmade.jp 

Instagram  @found_and_made


[取材・撮影 (佐野さん提供以外)] : 遠藤ちえ / 遠藤写真事務所 @chie3endo